私がソムリエ(当時は販売専門の資格ワインアドバイザー、後にソムリエと資格が統合)の資格を取得した2000年初頭のソムリエ教本には『ワインは唯一瓶熟するお酒である』と書いてあったような。
瓶詰めされたワインが一定の年数、保存に適した環境下で保管されて熟成による変化を得ることです。
手放しに「古いワイン!」と喜んでしまうけど、
熟成で得られる魅力とは何だろう?
時の魔法による香味成分の変化や口当たりの柔らかさなど時間だけが操る事の出来る予測不能なまさに神の御業がそこにあります。
1本のワインの熟成を女性に例え、
出来たてのワインを若い女性に、幼児体型の若い女性が余分なものを落として素晴らしいプロポーションの大人の女性に成長すると揶揄される方もいます。
または、そのエチケット(ラベル)に刻まれた年数に想いを馳せ、当時の甘美な思い出とグラスに注がれたワインのマリアージュを愛おしむことも。
じゃあ、全部のワイン寝かして飲んだ方がいいじゃん!!
って極論に達することになっちゃいそうですが、
安心(?)してください。そうは問屋が卸しません。
熟成に耐えうるワインのポテンシャルという物があります。
ボルド-の格付けワインのように当初から長期熟成を想定してガチガチに固いワインに仕上げてるものは別として、多くの造り手はワイナリーから出荷する時点でそのワインは飲み頃であると考え出荷しております。
飲み頃からゆるやかな時間の経過により、飲み頃のピークを迎え、ピークを過ぎていくと、香味成分は失われ、弾けるような果実味は色あせて、そのワインは本来の魅力を失っていきます。
主にワインに含まれるエキス分が関係しており、凝縮度の強い濃密なワインほどピーク最高点までが長いというイメージです。
2000年にドイツのラインガウ地方の造り手プリンツさんを訪問した際、当時彼はドイツ国営醸造所の醸造責任者でもあり、特別に国営醸造所のシャツカマー(秘蔵庫)を見学させてもらいました。
9月に訪れましたが、中は吐く息が白くなるほどひんやり冷たい巨大な地下トンネルに2世紀前のワインなど数え切れない本数の希少なワインが眠っています。
その時運良く、オークションに出品する予定の1948か1949年のドイツ白ワインを品質確認のためテイスティングするのでご一緒させていただきました!
グラスに注がれたワインの色合いが濃い黄金色から少し赤みがかっていたように覚えています。口に含むとさらに衝撃が!調和のとれた甘美な味わいの中に果実味がまだ活き活きしていてとても50年以上前のワインとは思えない「生きているワインだ!」という強烈な印象が残っています。
まだ小僧で青二才の頃だったのでヴィンテージばかりに圧倒されてて、せめて造り手と銘柄と等級くらいは確認しておけば良かったと悔やまれる希有な体験でした。
例えば「10年くらい前にもらった地元の2,000円くらいのワイン、まだ飲めるかな?」なんて質問時々あります。
高温や光にさらされ続けていたりと保存状態などにもよりますが、答えから言えば、コルクなどの影響で酸化してなければ飲めます。
舌をちょっとつけて酸っぱかったり、変な味がしなければ大丈夫。
後はアナタが美味しいと思うかどうかだけです。
よく、ワインを寝かせたり逆さまにして保存したりしますよね。
あれは液面が常にコルクに触れることでコルクの乾燥を防ぎ、コルクが乾燥により割れ、空気が入り酸化しないための知恵です。
実はワインだけでなく、そんなコルクにも寿命があります。
一般的には約25年と言われています。
前述の保存方法で長期保存していても弾力性は徐々に失われ、グズグズにもろくなっていきます。
対策として有効なのはリコルク(コルクの打ち直し)ですが、ワイナリーで当初から熟成目的で保存してあるものなら可能ですが、市場に出てしまったものはほぼ不可能です。
いつか飲もうと思っているいいワイン!いつの間かダメになってるかもしれません。
せっかくなので美味しく飲めるうちに楽しみましょうね。
ある程度熟成が進むと澱(オリ)なる沈殿物が発生します。主にタンニンや色素成分が沈殿しています。
自然発生するものなのでもちろん無害でワイン本体にも影響ないですが、グラスの中に混入すると、ざらりと舌に当たり、本来の味わいを損ねることもあります。
澱も画像のように粒状のものからかなり熟成が進むと粉状になっているものもあります。粉状になってうっかりボトルを激しく揺らすと舞い上がって沈殿するのに時間がかかるものもあります。
レストラン等では澱の発生具合を見てデキャンタ-ジュをすることもあります。
デキャンタ-ジュとはワインとデキャンタ(移し替える容器)を用意して澱のない上澄みのワインを容器に移し替える作業です。
レストラン等で時折ロウソクを使用したりするのはワインの注ぎ口近くを下から照らし、澱が上がってくるのを見えるようにして澱との境界線ギリギリのところまで余さず移し替えるためです。その際は画像の赤いキャップシールは全部外してボトルの首を通るワインが見えるようにします。
ご家庭でデキャンタはなかなか厳しいので、
念をいれて澱を避けるには、
① 飲む2日くらい前にボトルを立てておく(澱がボトル下に沈み落ち着きます)
② 可能な限り、傾けたり回したりせず静かに抜栓する。
③ 注ぐ際はグラスも少し傾け、ボトルが倒れる角度を減らし静かに注ぐ
これで澱の混入をかなり防いでワインを楽しむことが出来ますよ。
熟成したワインのボトルの底や抜栓したコルクなどにキラキラ光るガラスの結晶やダイヤモンドのようなものを見つけたことありますか?
それは異物混入ではありませんよ!
ワイン(ワイン)シュタイン(石)、いわゆる酒石です。
酒石とはワイン中に含まれる酒石酸とカリウムが結合すると発生するようです。
良いワインには出やすく、逆にこれもそのワインの味わいを構成する成分なので出過ぎても困るそうです。
主にガラスのようにキラキラしたものが多いですが、稀に雪の結晶のようなものなどもありますよ。
これは熟成の魅力とは反する話ですが、以前読んでてなるほどと思わせるウイスキー生産者のコラムだったので覚えてる範囲で借用させていただきました。
この考え方も踏まえて熟成の魅力をアナタなりに楽しんでみてはどうですか。
熟成を経ることで、香りがまろやかになり、口当たり良く、飲みやすくなる
でもこれは最終的にどれも似たような味わいに近づいていくということ
世界中のいろんな人種のおじいちゃんが元々の髪の色調を失い白髪になり、しわくちゃになって似てくるようなものだ
